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環境家計簿の基礎データ

UPDATE : 2009/12/9

1.基礎データの根拠

(1)CO2排出係数について

 日本では、環境省(JCCCA等外郭団体含む)、電力会社、自治体等が、独自の環境家計簿を作って公開している。
 但し、多くは2003年データを基にした環境省のデータ(http://www.jccca.org/component/option,com_docman/task,doc_details/gid,758/Itemid,622/)を使用しており、未だ(2009年現在)更新されていない。
 これが意味するところは、国民に一番近いところであり環境活動の根っこである環境家計簿を、環境省が軽視しているということ。環境省は環境家計簿の実態を把握しているのに、きちんと対応していない。
 「我が家の環境大臣」を運営している財団法人日本環境協会は、環境家計簿にゴミの項目さえ作っていない。理由は、「環境省のデータがそれしかないから」。その上、2003年の古いデータを使っているとは、日本の環境行政がいかに上っ面だけな物かということが伺える。環境省への問い合わせに対しても、たらい回しに外郭団体へと導かれていく。環境省から財団法人日本環境協会、その下のJCCCA全国地球温暖化防止活動推進センターへと...
 各自治体は環境家計簿を公表するに当たって、2003年の環境省データを使用しているところが多く、自治体独自のCO2排出係数を算出していることがあっても、算定方法はバラバラで数値の精度が高いかどうかも怪しい。
 わが町の上水道はCO2排出係数0.14であるが、地元の環境団体の協力の下に算定したものだという。地下水を水源にしているらしいけれど、この数値は非常に小さい値なので、私個人は信用できないでいる。ほとんどの自治体は、下水道込みでCO2排出係数0.58が多い。中には、下水道を別項目で算出している自治体もある。
 可燃ごみに関しても大きな開きがある。環境省の0.34から、最も多い0.84(環境省と言っているが出所不明)まで、倍以上の開きがある。ごみのCO2排出係数は、ゴミの処理方法によって違ってくる。わが町は、可燃ごみの焼却は他の自治体と共同で行っており、プラごみ(リサイクルマークのあるプラごみと、レジ袋)は容器リサイクル協会へ委託して、サーマルリサイクルされている(つまり燃料として燃やされている)。ということは、プラごみのCO2排出係数を独自で算出しなくても、可燃ごみのCO2排出係数(下記の算定根拠)で十分である。その中に、プラスチックも含まれているから。原料としてリサイクルしている自治体もあるけれど、プラごみのCO2排出係数を公開しているところは少なく、岩手県のe-デジシャクの3以上というプラごみCO2排出係数は、単に焼却した場合の数値であり、リサイクルを前提としていない。日本のプラスチックリサイクルについては、実際のところ燃やされているのが実情で、サーマルリサイクルがほとんどである。油化したり原料として再生されるのは、ごく一部らしい。サーマルリサイクルのほうが、原料としてリサイクルするよりも、環境負荷が少ないという意見もあるが、手間を掛けて分別しているのに、ただ燃やされているのでは残念な気がする。その分、いくらか化石燃料を使わなくて済めば良いが...
 この様に、環境家計簿の項目やCO2排出係数は、非常にばらつきが多く精度に欠ける実態がある。こんなものでエコを実践するのは残念としか言いようが無いけれど、国や自治体が精度の高い数値を毎年アップデートしてくれるまでは、現状で我慢するしかない。どんな数値であれ、減らすに当たっての目安にはなる。


(2)全国平均との比較[2009/12/9追加]
 

 作成した環境家計簿を、どう活かしていくかが肝心。人より多いのか少ないのかといった相対的な面と、どこまで減らすべきかという絶対量の目標を立てなければ意味がない。
 何と比較する(または基準とする)かについては、JCCCAが出している「年間の家庭部門世帯平均CO2排出量」との比較は、下記の通り自動車やゴミ、水道が含まれておらず意味が無い。

<JCCCAホームページからの引用>

「部門別二酸化炭素排出量」にいう「民生(家庭)」部門と、「家庭からの二酸化炭素排出量」とでは指している内容 が異なるので、注意を要する。(共に温室効果ガスインベントリオフィス作成の資料)「家庭からの二酸化炭素排出量」は、「民生(家庭)」に加えて、運輸 (旅客)部門の自家用乗用車(家計寄与分)、廃棄物(一般廃棄物)部門で計上された排出量、および水道からの排出量を足し合わせたものである。 ( 一般廃棄物は非バイオマス起源のみを対象とし、事業系一般廃棄物を含む。)


 比べるなら、それらを含む下記の「家庭からの二酸化炭素排出量」との比較が適している。2007年の家庭からの一人当たり二酸化炭素排出量は約2,150kg-CO2だから、二人世帯であれば年間4,300kg-CO2という事になる。これが世帯あたり(人数関係なく)になると年間5,350kg-CO2になる。
 昨今は単身や少人数世帯が増えた事により、人工が減っているのに世帯数が増えており、家庭からのCO2排出量の増加要因になっていると言われている。
 我が家も二人世帯であり、厳しいながらも年間4,300kg-CO2を基準とし、当面の目標である平均からの-25%削減目指し、年間3,225kg-CO2を達成しなければならない。

 将来的には、政府目標である1990年比-25%を視野に入れている。1990年比-25%というのは、下記のデータから1990年の家庭からのCO2排出量約1,600kg-CO2から-25%の約1,200kg-CO2という値になる。二人世帯なら2,400kg-CO2月あたり200kg-CO2ということになる。
 非常に厳しい数値ではあるけれど、2009年9-12月環境家計簿については毎月200kg-CO2を下回っており、既に達成が視野に入ってきている。
 しかしながら、旅に伴なう航空機利用などのCO2排出に関しては、別途対応を考えなければならない。


<独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センター温室効果ガスインベントリオフィス(以下、「GIO」)ウェブサイトより>

2009. 4.30 日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2007年度) 確定値 xls: 1.3MB



<全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイトより、家庭からの二酸化炭素排出量(一人あたり、燃料種別)(2007年)>


燃料種 排出量* 割合
石炭等 0.0 0.0%
灯油 211.1 9.7%
LPG 110.1 5.1%
都市ガス 170.1 7.9%
電力 916.6 42.3%
0.6 0.0%
ガソリン 590.1 27.2%
軽油 30.8 1.4%
一般廃棄物 76.2 3.5%
水道 60.2 2.8%
合計 2,165.7 100.0%



2.各排出項目の排出係数

(1)電力


 原発の停止等による電力原の変動によって、毎年CO2排出係数が変動する。
 下記の東京電力ウェブサイト(Update 2009/07/09)より引用したデータによると、2008年のCO2排出係数は0.332で、2007年の0.425よりも大幅に低下している。( )内の炭素クレジットを反映する前の値では0.418。

CO2排出量・排出原単位

 2008年度は、前年度に引き続き柏崎刈羽原子力発電所が停止していましたが、福島第一・第二原子力発電所の安全・安定運転や火力発電の効率的な運用により、 2008年度の実CO2排出量は1億2,070万tとなりました。さらに炭素クレジットの活用などにより、「地球温暖化対策の推進に関する法律」 (事業者別排出係数)に基づく、東京電力の2008年度実績は、調整後CO2排出量で9,590万t、調整後CO2 排出原単位で0.332kg-CO2/kWhとなりました。

CO2排出量・排出原単位の推移

年度 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
CO2排出量
(10万t-CO2
836 876 898 850 940 910 866 888 841 894
販売電力量
(億kWh)
2199 2276 2301 2317 2489 2544 2574 2654 2670 2742
CO2排出原単位
(kg-CO2/kWh)
0.380 0.385 0.390 0.367 0.378 0.358 0.336 0.335 0.315 0.326
年度 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
CO2排出量
(10万t-CO2
922 874 1074 1272 1092 1061 976 1265 959
(1207)
-
販売電力量
(億kWh)
2807 2755 2819 2760 2867 2887 2876 2974 2890 -
CO2排出原単位
(kg-CO2/kWh)
0.328 0.317 0.381 0.461 0.381 0.368 0.339 0.425 0.332
(0.418)
-
東京電力のCO2排出原単位の算定にあたっては、「地球温暖化対策の推進に関する法律」上の「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」に準拠しています。なお、本制度ではグリーン電力証書などのCO2削減価値は考慮されていません。
2008年度のCO2排出量及びCO2排出原単位は炭素クレジットを反映した値。( )内は炭素クレジットを反映する前の値。

CO2排出量の比較(2006年度)

  CO2排出量(億t-CO2 備考
世界 273.5 -
日本 12.70 世界全体の約5%
電気事業 3.65 日本全体の約29%
東京電力 0.98 日本全体の約8%
世界の排出量は暦年値
出典:
(世界)(財)省エネルギーセンター「エネルギー・経済統計要覧(2009年版)」より試算
(日本)温室効果ガスインベントリオフィス「温室効果ガス排出量・吸収量データベース」
(電気事業)電気事業連合会「電気事業における環境行動計画」(2008年9月)


(2)LPG(プロパンガス)

 都市ガスに比べ、LPGは発熱量が都市ガスの約2倍と大きい為、LPGの体積当たりのCO2排出係数は3倍程度になっている。地域によってCO2排出係数は少し変動する。また、ガスを充填して、各家庭へボンベを運搬している分、CO2排出量は多くなる。

(3)ガソリン


 厳密に言えば、化石燃料については採掘方法や輸送方法によってCO2排出係数は大きく異なり、オイルサンド等の採掘・精製には大量の水と燃料を消費し、膨大なCO2を排出している。
 ガソリンについては、環境家計簿のガソリンのCO2排出係数は2.3[kgーCO2/L]なので、1Lのガソリンが排出するCO2は2.3kgになる。
 我が家が最近購入した日産ノートの公称10・15モード燃費とCO2排出量から計算した1L当たりのCO2排出量は、20km/L × 116g/km = 2,320[gーCO2/L] になり、ほぼ環境家計簿のガソリンのCO2排出係数通りの2.3kg/Lになる

(4)上下水道

 ほとんどの環境家計簿には、何故か下水道の項目が無い。しかし、下水処理場の浄化処理過程や汚泥処理、ポンプ場等では膨大なエネルギーが消費され、CO2以外の温暖化ガスも排出されている。特に汚泥処理については、脱水や焼却によるエネルギー消費や、焼却灰の処理や歩道のブロックへのリサイクル等、いろいろ問題がある。
 多くの環境家計簿は、上下水道を合算したCO2排出係数である場合も多いが、地域によってその数値には大きな開きがある。中津川市では016kg-CO2/m3であるけれど、福島県では0.58kg-CO2/m3となっており、岩手県の環境家計簿では、浄水0.58、下水0.27というように、別計上という地域もある。全国平均では、環境省の0.59kg-CO2/m3というデータもある。
 地域の上下水道の処理方式や地形の高低差によって変動する為、地域毎に異なって当然であるが、中津川市の数値は低すぎる気がするし、岩手県の数値は大きすぎる気もする。しかし、実際はもっと付随する設備や後処理、建設や解体に伴うCO2排出があるので、これらの数値でも小さすぎるのかもしれない。

 わが町は、地下水を水源にした独自の上水道を有している。上水道にのみ、地元の環境団体の協力を基に算出したCO2排出係数がある。下水道については広域のものであり、町独自のものではない。

(5)ごみ

 ゴミの内容によって、CO2排出係数は大きく変動する。しかし、これは非常に難しい問題であり、ゴミの内訳まで細かく計上できないから、あるモデルから計上することになる。
 生ゴミ等の水分を多く含むゴミの焼却には多くのエネルギーを消費する。またプラゴミや紙類も、焼却すれば多くのCO2を排出する。
 ペットボトルや牛乳パック、トレイ、缶、ビンなどについては、リサイクルについてはゴミとして計上していないけれど、実際には運搬やリサイクル処理にエネルギーを消費している。よって、リサイクルの有無によるCO2排出量の差からCO2排出係数を算出して、環境家計簿に計上する必要がある。



3.CO2排出係数の根拠

 全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より、2003年までのデータを元に計算している算定根拠(http://www.jccca.org/component/option,com_docman/task,doc_details/gid,758/Itemid,622/)より

 環境省へ問い合わせたところ、環境家計簿のCO2排出係数に関しては、下記のデータ以外にデータはありませんとのこと。JCCCAに問い合わせたところ、委託されて行ったものなので、毎年更新しているわけではないとのこと。
 













4.我が家で採用したCO2排出係数


 2009年現在の、環境省データに基づくCO2排出係数と、東京電力のデータ、自治体の算定データ(採用していない)を参考にしている。
 2008年環境家計簿のCO2排出係数からは大きく改定し、全体的にかなり甘い数値になっているが、2009年10月からはリサイクルごみも加えている。

(1)電力

 東京電力から毎年公表される、前年のCO2排出係数。

(2)LPG

 6.5kg-CO2/m3又は3.0kg-CO2/m3。

(3)ガソリン

 2.3kg-CO2/L

(4)上下水道

 町のデータより、上水道のCO2排出係数0.14kg-CO2/m3。下水道についてはデータ無し。
 よって、最も多い上下水道合わせて0.58kg-CO2/m3という数値を採用。

(5)ごみ

 燃えるゴミ:可燃ごみは環境省の2003年データより、0.34kg-CO2/m3。(我が家は生ごみをコンポスト処理し、リサイクル可能なプラスチックごみを分別している為、紙類がほとんどを占める。)
 プラゴミ  :リサイクルしているはずの分別したプラごみについては、サーマルリサイクルしており、CO2排出係数のデータ無し。よって、可燃ごみと合算して計上する。

(6)リサイクルごみのCO2排出量(廃棄処理+バージン原料製造+マテリアルリサイクル)

 上記の全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)から引用したデータ(http://www.jccca.org/component/option,com_docman/task,doc_details/gid,758/Itemid,622/)より

 スチール缶 :0.04kg-CO2/本
 アルミ缶  :0.17kg-CO2/本
 ペットボトル:0.07kg-CO2/本
 ガラスビン :0.11kg-CO2/本
 牛乳パック :0.16kg-CO2/本
 食品トレイ :0.008kg-CO2/枚

(7)粗大ゴミ

 2009年は冷蔵庫と自動車を買い替えた。その処理で、どの位CO2を排出するかは不明。どちらも家電リサイクル費用と、自動車リサイクル券の費用を支払って処理するので、リサイクル率が高いとは思う。
 その他不燃物や粗大ゴミについては算定が難しいので、現時点では計上しない。